となりの紀田くん



"嫌ですねえ、殺してなんかいませんよ。死んでもらったんです。"





そこから流れ出す
私たちのvoice




ろ、録音機!?





さすが紀田!!
やるときはやるじゃない!






「なっ……」






みるみるうちに
青ざめていく
要さんの表情






「その写真を証拠に、俺を犯人に仕立てあげたって、これが全てお前の悪事の証拠になる」





「覚えてなさい……」





要さんは紀田を
押し退けると





捨て台詞を残して
去っていった





「竹中くん………」





「………ははっ」





平山さんが
悠斗の肩に触れると
いきなり笑い出す………





「悠斗?」





「あはははははっ!バカだなぁ、俺。ゆあを裏切ってまで好きになった女に………騙されて利用されて。」






悠斗の言葉に
何も言えなくなる





どうやって慰めていいのか
わからなくて私は
ギュッと拳を握り締めた。






どうやら、それは
私だけじゃないみたい。





「こんな扱い受けてまで………まだ、あいつが好きなんて、どうかしてるよな俺。」





(行くぞ)




紀田が小声で
私に合図する





そして私の手を引いて
歩き出した……




(ちょ、ちょっと!)






(大丈夫…悠斗には平山がついてるから)






私は二人を見つめて
静かに頷いたーーーーーー






平山さん





どうか悠斗を
救ってあげて。





ーーーーーーーーー





紀田とゆあが去った後





「竹中くん…」





本当は気づいてた
要の言葉が全て
嘘だってこと………





要の側にいられるなら
紀田を苦しめる為に
利用されたって
いいと思ってた………





でも、いざこうやって
要自信から裏切られると
針で突き刺されたように
心が痛くて張り裂けそうで………






「ごめん、一人にしてくれないか?」






気づいた時には
要も紀田もゆあも
女将も居なくて





何故か同じクラスの
平山が俺の肩を
掴んでいた






「分かった………でも、これだけ言わせて…」






平山は真剣な顔で
掴む手に力を入れる






「私ね……竹中くんの事が好き」






「え……?」






「あの日からずっと…竹中くんが好き」





「…………ありがとう………でも、ごめん今は考えられない」





「そっか…でも、私……諦めないから!」





平山はニコッと
満面の笑みで笑うと
手を差し出して





「じゃあ、改めて。友達としてよろしく」






俺は平山の手を取り
微笑み返す………





正直、驚いた。





ありがとう平山。
こんな俺を好きに
なってくれて………




でも、それでも俺は
アイツが………




不知火 要が好きなんだ。
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