となりの紀田くん



見上げればそこには
紀田がいて





「紀田!?」





私は驚きのあまり
目を見開く





な、何で紀田がここに!?





「悪かったな平山、無茶ぶりして。」





「だ、大丈夫!」




何が何だか
全然わからない。





「ほら、行くぞ」





呆然と立ち尽くしている
私の腕を引っ張って
歩き出す………





ーーーーーーーー





「って、ちょ!!」




「あ?」





「自分で歩くから離して!」





「無理」





「何で!?」





「お前、帰ろうとするから」





「わ、わかった!帰らないから!」





「しょうがねえな………」





紀田は大人しく私を離して





「それ、貸せよ」





と私の両手にある
買い物袋を指差す





「いいよ、別に。重くないし!」





「いいから貸せよ」





強がる私なんて
お見通しとでも
いうように




私の手から
荷物がすり抜けてく





そんな紀田の優しさに
かつて感じてた時と同じ
感情が溢れだす………





人がせっかく
友達として見てやろう
としてるのにズルいよ紀田は。





こんな優しくされて
好きになるなって方が
無理だと私は思う。





ーーーーーーーーーーー





結局、荷物はずっと
紀田が持ったまま
紀田の住むマンションへと
戻ってきた………………





「ゆあ、お前最後に入れ」





「は?何で?」





「いいから。」




私は彼の言葉通り
最後に足を踏み入れた





まさにその時





パァーーーーーーーンッ
パァーーーーーーーンッ





「Happy birthday !!!」





何かが吹き飛ぶ
音と共に





みんなの大きな声が
私の耳を掠めたーーーーーー
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