となりの紀田くん



「ちょ、ちょっと紀田!!」





あまりにびっくりして
回された腕を思いきり掴む





「なあ、なんで羽麻と別れたの?」






「なんで?」





「いいから答えろ」





悲しそうな声で
抱き締めている腕に
より一層力を込める。





貴方は今どんな
顔をしているの?





「何でそんなこと聞くの?紀田には関係ない事じゃん」






「関係………無くねえよ」





「へ?」





「ゆあは、羽麻の事が好き?」





「好きだよ」





私の言葉を聞いて
黙りコクる紀田





その体は微かに震えていて






「でも、それは友達としてっていう意味で恋愛感情じゃない。だって私は…………」






そうだよ。
まさかの事態で
すっかり忘れてたけど





今日はもともと
止まることを知らない
この感情を全て





洗いざらい暴露
するつもりだったんじゃないか。





緩んだ紀田の腕から離れ
正面を向き合う





彼は驚いた顔をして私を見つめ
その体は目で確認が
取れてしまうほど震えている………






「だって私は今も昔も紀田が大好きだから」






一斉一代のマジ告白。
これで二回目






満面の笑みで言えた。






たとえどんな答えが返ってきても
私、諦めないから。





おサルさんは諦めが
悪いんだって見せつけてやる!





しかし、返ってきたのは
答えではなく………





ドンッ





何故かベッドに
押し倒されて





「んん…………っ」





キスをされた。





状況が読み込めない。
当たり前だーーーーーーー






だって告白をキスで
返されたことなんて
一度もないから。





でもね……………紀田。





そうやって大して
気持ちもないのに
無闇やたらにキスなんて
していいもんじゃないんだよ?





だってほら………………
私の胸はこんなにも
傷ついてるんだよ?




何だかんだ強がっても
やっぱり期待させられる分だけ
君の気持ちが私に無いことを
思い知らされるようで怖い






苦しいよ…………






「わ、わりぃ」





急に謝って私から
離れていく紀田





「紀田はズルいよ。そうやって私の気持ち掻き乱して混乱させて、どんどんハマらせていくんだ。」





「ごめん。俺が悪かった………。泣かないでくれよ」





「紀田は私をからかって楽しい?本気で告白した私の気持ちを何だと思ってるの?」






違う…………
こんなことが
言いたかった
わけじゃない。





何で告白までは
上手くいったのに
こうなるのかな?




私…………本当、不器用だ。





「対して気持ちもないくせにキスなんてしないでよ」





「それは違う!!!」





私の冷めきった呟きに
紀田が大声で否定する





「違うって何が?だって紀田は要さんが好きなんでしょ?」





「違う、要なんかじゃない…………俺が好きなのは、お前だよ。優………………」






ドサッ






そこまで言ってベッドに
倒れ込む紀田ーーーーーーー





「紀田!?」




近づいてみたら
小さな寝息を
立てていて





寝ていることがすぐにわかった。





「今、私の名前………いいかけたよね?」





そんなどうしようもない
質問を寝ている相手にぶつけ
布団を首までしっかりかけて
紀田家を後にしたーーーーーーー
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