となりの紀田くん
*紀田side*
「…………ん。」
カーテンの隙間から
差し込んでくる光の
眩しさで目が覚めた。
「あれ………俺、確か昨日……」
あーあ、全部思い出した。
「何してんだ俺………」
熱で理性飛びそう
だったからって
さすがに不味いよな。
だって………………
この気持ちは本気で
伝えなくちゃ意味がない。
その為にはまず
自分の過去を全て
ゆあに話さなくちゃ
いけない…………
「でも、タイミングがな…………。だからって、あいつがまた他の誰かのもとへ行くのも正直辛いし」
俺ってこんな
女々しかったか?
いや、違うな。
あまりに本気の恋を
したことが無さすぎて
どうしていいかが分からないんだ。
恋愛なんて遊びで
十分だった…………
だからゆあの事も
遊びで終わらせるつもりだった。
でも、あんなに対等に
俺に言い返してきたのも
俺のルックスを貶すのも
ゆあが初めてで
正直、びっくりした。
そんな真っ直ぐなあいつに
俺は惹かれていったのに
俺はあいつを
苦しめてばかりだ。
「電話しよう」
携帯を手に取り
アドレス帳から
内倉 優亜を探す
「あ、もしもし……紀田?」
「おう………あのさ…………」
「あ!熱の方はもう大丈夫なの?」
俺の言葉を慌てて
遮るゆあ。
やっぱり、俺の話なんて
聞きたくないよな。
きっとゆあにとって
俺の言葉なんて全て
ただの言い訳にしかならない。
ダッセえくらい
ゆあのことになると
弱いのな俺…………
「あ、お陰様でもう大丈夫。」
「そ、そっか。じゃあ、今日リベンジ行こっか?」
「は?」
「病み上がりで、申し訳ないんだけど…………どうしても紀田と行きたいところがあって」
何これ…………
死ぬほど嬉しいんだけど。
ゆあは俺を嫌ってない?
まだチャンスはある?
「じゃあ、今日の夜7時に紀田の家の前に行くから」
「いや、いい。俺が迎えに行く。」
「そう?じゃあ、待ってる。」
「ああ。」
電話を切って………
シャワーを浴びるため
脱衣場に向かう。
今日がチャンスかもしれない。
俺は拳を思いきり
握りしめた。