となりの紀田くん
家のドアを開けるのが怖い。
こんなの生まれて初めてだ。
玄関を開けて
何も言わずに入る
なんで、こんな日に限って
二人ともいるんだよ………
「あら、ゆうちゃんおかえり。元気ないみたいだけど、どうしたの?何かあった?」
「別に………」
それだけ答えて
自室に籠った。
何て聞けばいい?
"お母さんとお父さんは
人を殺したの?"
そんなこと
聞けるわけない。
何もかも全部………
今日の出来事が
夢だったらいいのに……
明日なんて
来なければいいのに。
そう願って眠りに着いた。
ーーーーーーーーーーー
しかし、どんなに
願ったって朝は
訪れるわけで
重い足取りで
学校へ向かったーーー
しかし、教室に入るなり
みんなから向けられる白い目
今までとは明らかに
何かがおかしい。
「ちょっとイケメンだからって調子乗りすぎなんじゃね?」
「つーかよ、まじ不知火先輩を振るとか理解できねー」
「あ、ってか紀田くんの両親が、不知火先輩の両親を殺したっていう噂聞いたよ!」
「えー、怖い!!いくらイケメンでもさぁ、殺人犯の子供とは仲良くしたくないわ。」
なんなんだコレ。
何の話だかさっぱり
わからない……
俺が要を振った?
それは大きな間違い………
「おい、みんななんか勘違いしてるみたいだから言うけど………」
「うわっ!近づくなよ人殺し!」
人殺し…………俺が?
「羽麻も何か言ってやれよ!親友が人殺しなんだぜ?」
友達だと思っていた
健と翔真がみんなを
味方につけて
俺を目の敵にする。
人間の友情って
こんなに脆くて
儚いものなのか?
それでも…………俊。
お前だけは俺の味方で
いてくれ……………
しかしーーーーーーー
「人殺し、近づくな……」
俊の口から出た言葉は
酷く残酷だった………
「あはははははは。」
「何笑ってんだよ!きめえな!」
クラスの一人が
俺の頬を殴り飛ばす……
痛くねえな…………
だってその数千倍も
心の方が痛いから…………。
そうか分かった。
これが人間っていう
生き物なんだな。
なら、うちの両親が
犯罪者じゃないという
証拠を持ってくれば
みんなは俺を信じる?