となりの紀田くん



「みんな、やれ!」





一人の合図で
男子が一斉に
襲いかかってくる





どうせ裏切られて
全てを無くすのなら
最初から何も
信じなければいい……





気づけば女子生徒が
誰もいなくて
俺と俊以外の
男子生徒みんなが
苦しそうに呻いていた。





ーーーーーーーーー





「どうしてこんなことした?」






「別に………」






「お前は意味もなくみんなを殴ったのか?」






「…………………………」





ガラガラガラッ!!!





「ゆうちゃん!!」





いきなり扉が開いたかと思えば
母が血相をかえて俺を呼ぶ






「あ、紀田のお母さんですか?」





「はい、そうです!!」





「とりあえず、今日はもう帰らせて………後日また話を聞きます。お母さんからもお願いします。」






「はい、わかりました」





俺は無言で立ち上がり
その場を後にした………





ーーーーーーーーーー





「何であんなことをした?」





家に帰るなり真顔で
聞いてくる父




「別に………」





「なあ、裕也。拳は意味もなく人に振るうためにあるわけじゃない。拳っていうのはな………」





何にも知らない癖に




「うっせえな…………」




「お前………親に向かって……」





父が眉をひそめて
俺を見る





「お前らに…………俺の気持ちが分かるか?親を勝手に犯罪者扱いされて、恋人からも親友からも裏切られて………いや、恋人に関しては違うな。裏切られたんじゃない。最初から愛されていなかったんだ。」





自分が哀れすぎて
情けなく思う。




俺という存在は
あまりにも
ちっぽけ過ぎたの
かもしれない。





「どういうことだ………?」





「なあ、不知火 要…分かる?」





俺の口から出た言葉に
父の瞳が微かに揺れる






「正直に答えて………そいつの両親を殺したって本当?」





正直に言ってくれ。
やってないってーーーーーー





そうすれば……………





みんなとの関係は
戻せなくても
疑いは晴らせる。





それさえ出来れば
最愛の両親さえいれば
俺はもう他に何も
いらないからーーーーー
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