となりの紀田くん



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「ゆうちゃん!!」





家に帰るなり
母が俺の名を呼ぶ






「触るな」





俺がそう言えば
母は俺を抱き締めようと
していた手を止める





「なあ、父さん」





「なんだ?」






「俺、あの学校から転校するよ」






「そうか!なら、アメリカ行きの話があるんだ、お前も一緒に……」






「勘違いすんな」






俺は父の言葉を
遮って二人を
思いきり睨み付ける






「俺は、お前らを一生許さない。それは実の両親だからこそだ。アメリカにはお前ら二人で行け。俺はここから離れた町で一人で暮らす。」







「そうか………俺は何も反論出来ない………お前の好きにするがいい。」






「ああ………」





「なあ、裕也」





「何?」






「すまん。」






「……………………」






何故泣く?
泣くくらいなら
謝るくらいなら
最初からそんな罪
犯してんじゃねーよ。






俺は何も言わずに
自室に戻ったーーーーー






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そして要は卒業を迎え
俺は進級すると同時に
転校したーーーーーー






新しい住まいは
とある高級マンション。






あんな腐った人間の
力を借りるのは
不本意だけど





所詮まだ中学生。





転校前に一度だけ
うちに俊が来た。






「転校するんだってな……」






「そーだよ」






「あのな………裕也。」





「分かってるから言うな。そうしなきゃならなかった理由があるんだろ?でも、俺は俊、お前を許さない。」





だから泣くなよ。
最後くらい笑顔で
終わろうぜ?





「って言いたいけど、お前にはいろいろお世話になった面もあるしな。だから………これで終わりにしよう」





俊は何も言わずに
俯くだけ………





「もし、またどこかで会っても俺たちは他人だ。もうきっと親友には戻れない………」





「ありがとう」





「もう、泣くなよ。羽麻 俊は笑ってる時が一番カッコいいぞ」






「ありがどぉおおおっ!!」





そうしてこの二人が
また同じ人を好きになるのは
もう少し先のお話。
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