となりの紀田くん
「いや………それは、あの!」
売り言葉に買い言葉………
ではないけれど
そういう類いのもので………
「ん?何?」
「いや…その………」
「ん、だから何?」
いや…だから、その…………
「はい、面倒見させていただきます」
負けました。
だって笑顔が怖いんだもん!
「さすが俺の猿」
「そのかわり!安静にしてよね」
「はいはい」
紀田をベッドに
寝かせると
夕飯の支度に取りかかる
「冷蔵庫漁っちゃうけど大丈夫?」
「いいけど、何もないぞ?」
「うわ、本当だ!ちょっと買い物行ってくる!!」
「は?じゃあ、俺も………」
「いいから紀田は寝てて!」
半ば強引に紀田をベッドに
押しつけてから
家を出たーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
「んー、これとこれと…………よし、これでOK」
今日のメニューは
ハンバーグ
なんかこの感じ
新婚さんみたーい///
なんて一人で妄想しながら
レジに並んで買い物を済ませる
「うわ、重っ!」
ちょっと買いすぎたかなー
なんて思っていると
「あれ、ゆあ?」
「お、瑠威!」
振り返るとそこには
黒髪に赤紫っぽい
メッシュを入れた
男の子がいて
「クリスマス以来だな!」
「だね!でも何で?」
「あー、親父の仕事の都合で、またこっちの町に戻ってくる事にしたんだ。だからその下見!」
「まじ!?なんか毎日が楽しくなりそう!」
「だな。………その荷物は?」
「あ!紀田に夕飯作んなきゃだ!じゃ、ごめん、またね!」
私はそれだけ言って
走って紀田の家まで戻る
「おっせえんだよ」
玄関を開くと
紀田が仁王立ちしていて
不機嫌そうに私を睨む
「ごめん、瑠威と話してたらさ……ついね?」
「るいって………この間の?」
「そう!ってか安静にしててって言ったでしょ?」
私の言葉に紀田は
渋々ベッドまで戻り
私は今度こそ
夕飯の支度に
取りかかった。