となりの紀田くん



「紀田!」





安定の無表情で
入ってきたかと思えば






「悪いけどさ………俺の目の届かない範囲で悪事働くのやめてくんない?俺、嘘つきにはなりたくないから」





安藤だっけ?
の胸ぐらをつかんで
にっこりと笑う。






「ご心配なく。紀田くんの目の届かない範囲で悪事を働いても、ゆあは俺が守るんで」






「へえ。それは見ものだな」





「見せ物じゃない」






いつの間にか
女子軍そっちのけで
言い合う二人





って何でこの二人で
喧嘩おっぱじめてんのさ!!
なんか火花散らしてるし!





相手間違えてるアルヨ!!!





「とにかく、君たちは今後一切ゆあに近づかないで」






私の心の声に気づいたのか
瑠威が改めて仕切り直す。






「もし、ゆあに手出したら、あれだな…………」






今度は紀田が胸ぐらを
掴んだまま拳を振り上げる





「………ひぃっ」





「こうなると思えよ」





怯える女子軍に
容赦なくいい放つ。





「すみません、もうしません!」






女子軍は逃げるように
去っていったーーー





「紀田も瑠威もありがと!」





「ねえ、ゆあ!俺とデートして」





急に満面の笑みを浮かべて
食い入るように言ってくる瑠威





「デートって大袈裟だなあ。付き添いなら任せて!」





「よっしゃあ!じゃ、行こう」




目をキラキラ輝かせながら
私の腕を掴んで歩き出す





昔は私より小さかったのに
いつの間にか私より
大きくなっている瑠威の背丈





幼馴染みの成長って
何だか嬉しい!!





高校2年生…………
何だかんだ楽しくなりそう!






「おい!」





「紀田も来なよ!」





後ろで顔を歪めている
紀田にそう言って
私と瑠威は教室を後にする





「ったく焦るっつーの。はぁ………」





そんな紀田の呟きは
私たちには届いていなかった。
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