となりの紀田くん
何、逃げてるんだろう私。
大嫌いなんて言っちゃった…
戻ろうとして足を止める。
戻って何て言えばいい?
あんな大口叩いて
嫌いとか言って
もう嫌われちゃった
かもしれない…………
みんなに申し訳ないな。
あんなに親身になって
頑張ってくれたのに………
私はやっぱりバカだ。
「鈴ちゃん!!」
不意に聞こえてきた
私を呼ぶ声。
振り向けばそこには
息を切らしたら梓くんがいて………
「梓くん…………」
思えば私
自分のことばかりで
何も考えてなかった…………
「鈴ちゃん………ごめ………「ごめんなさい!!!」
私の急な謝罪に
目を丸くする梓くん。
「大嫌いとか言ってごめんなさい!!」
きっと言えないのには
それなりの事情があるの
かもしれない………
なら梓くんが
話したいときに
話してくれれば
それでいい。
私が梓くんを
信じなくてどうするの………
「私ね………梓くんが私から離れて遠くへ行ってしまうんじゃないかってずっと怖かったの………臆病だから」
「鈴ちゃん…………」
「でもね、私は梓くんが大好きだから………信じるよ、梓くんのこと。だから梓くんが話してくれるまで聞かない………だから私を嫌いにならないでね」
上手く笑えてるかな?
「鈴ちゃんありがとう。僕も鈴ちゃんが大好き!!嫌いになれるわけない!」
そう言って私を
抱きしめる。
暖かい手の温もり
それが以上に心地いい。
「ありがとう。じゃあ、帰ろっか?」
「待って。鈴ちゃんはああ言ってくれたけどさ……やっぱり隠しとくのは良くないと思うんだよね」
それって…………
「本当、本当すっごく恥ずかしいんだけどね?」
え、っと…………
何これ?
まだその真相を
受け止められる程
心の準備が整って
ないんだけどなー
ってかあれ?
私の必死の決意は
一体なんだったんだ?
もう、辺りはすっかり暗いのに
目に見えて分かるくらい
梓くんの顔が真っ赤で…………
って何で顔真っ赤なの?
「あれ、僕の妹なんだ………」
「なんだ、妹なのか………………ってええええええええっ!?」
鈴の大声は遥か遠くにいる
ゆあと紀田にまで聞こえて
いたのであった。
*鈴side end*
「ねぇ、紀田」
「あ?」
「なんか今、狼の遠吠えみたいなの聞こえなかった?」
「さあな?幻聴だろ(いや、聞こえたけど………)」