となりの紀田くん
それからずーっと
紀田の電話やメールを
無視し続け
ついに夏祭り当日ーーーーー。
「じゃ、行ってくるわ!」
玄関先で柚の声がして
私は浴衣姿で玄関まで向かう
「はーい、気を付けてね!」
「姉貴は何時頃家でるの?」
「も、もう少ししたら!」
本当は行かないんだけど。
「戸締り気を付けろよなー!」
「御心配なく!」
意地悪く笑う柚に
精一杯の悪態をつく。
「あと…………」
言葉を濁しながら
柚が耳を貸せって
言うから
言われた通りに
耳を傾けるーーーーー
「浴衣姿、可愛いよ」
なんて囁く。
ーーーーーーーーーっ!?!?
「柚のバカ!!!」
クスクスと笑いながら
家を出る柚の背中に
向かって叫んだーーー
ーーーーーーーーーー
バタン
ドアを閉めて
その場にしゃがみこむ…………
何やってんだろ私。
柚を誤魔化してまで
浴衣なんかに着替えちゃってさ
どんなに浴衣姿で
可愛くなれたって
紀田に見てもらわなきゃ
意味がない…………
「はぁああああ………」
大きなため息をついて
頭を抱えた瞬間
ピンポーン
インターホンが鳴った。
柚、忘れ物でもしたのかな?
「開いてるよ」
「………………………」
無言と言う名の返答。
その直後……………
ピンポン連打の悲劇。
なんなの!?
「柚やめて!開いてるって言ってるでしょ!?」
思いきりバンッと
音をたてて
ドアを開く…………………
「お前、電話くらい出ろよ!!」
え??