となりの紀田くん
「ちょっとアンタ!初対面の人に対してバカ呼ばわりなんて失礼ね!!」
「だから初対面じゃねえっつーの!」
眉をつり上げて
彼を睨む私
しかし彼も負けてはおらず
不機嫌オーラ出まくりの
態度で言い返してくる。
「知らないわよ!覚えてないんだからしょうがないでしょ!?だったらアンタは私とどんな関係だったって言うのよ?」
「恋人」
「はぁ?」
「恋人だ………バカ猿」
ブチィ
もう怒った。
「誰が猿だ!私がアンタの恋人?はっ、笑わせないで。アンタとなんか死んでも付き合わないわよ!」
そう叫んで鼻を
フンッと鳴らす。
「あぁ、そうかよ…………」
やたら低い声で
力無さげに呟いて
紀田は病室を
出ていったーーーーー
なんなの!?
意味わかんない!!
あんだけ対等に言い合い
してたのにいきなり何?
「紀田!!」
柚が紀田を追いかけて
「ねえ、ゆあ」
鈴が私の目を見る。
「な、何?」
その威圧感に萎縮して
思わず言葉がつっかえる…………
「紀田くんに謝って。」
「へ!?」
「謝って」
いつものんびりほんわかな
鈴の顔があまりにも真剣で
思わず間抜けな声が出てしまう。
でもさ……………………
私は悪くなくない?
ケンカ売ってきたのはあっちだよ?
「なんで私が謝るの?」
「恋人って話、本当なんだよ。記憶がないってのはもうどうしようもないけど………でもあんな言い方は酷すぎる」
「だってケンカ売ってきたのはあっちじゃん!!」
「確かにそうだけど………言っていいことと悪いことがあるじゃない。記憶のある紀田くんにとって、それがどんなに辛いことか分かる?」
「わかんないよ!わ、私は謝らないから!」
「見損なったよ………ゆあ」
鈴はそう残して
紀田と柚の後を追うように
病室を出ていったーーーーー
鈴まで………
私が悪いっていうの??
記憶がないんだもん!!
何も思い出せないよ……………