となりの紀田くん



あれから約2週間
無事に傷口も治り
病院も退院して





今日から2学期です。





医者の話によると
刺された衝撃で
どうやら一部の記憶に
障害が起きてるらしい。




吹き飛んだ記憶が
戻るかはわからない。





きっかけがあれば戻る可能性も
あるらしいけど……





そのまま戻らない
可能性もある。





それに…………
無理に思い出そうとすると
激しい頭痛にみまわれるから
どうしようもない………





この2週間の間に
いろいろ考えてみた。






ちょっと言い過ぎたかなって。






今の私にとっては
初対面の人かもしれないけど
紀田にとっては違うんだよね






紀田にとって本当に
私が大好きな彼女なら
あんなこと言われて
傷付かないわけがない。






私が逆の立場だったら
苦しくて死んじゃうかも…………。






恋愛感情に対しては
まだ何とも言えないけど
せめて謝らなくちゃ………





拳を握りしめて
ギュッと力を込める。






この2週間の間
柚や鈴はたびたび
見舞いに来てくれたけど






紀田に会うのは
今日が久しぶりだーーーーー





どんな顔して会えばいい?
どうやって話しかけようか






そんなことを
考えながら
学校の門を潜る





「おはよ、ゆあ」





後ろから声をかけられ
振り向くとそこには
鈴と梓くんがいて






「おはよ!あっ、梓くん退院おめでとう」






「それを言うなら、ゆあちゃんもね」






笑いながら話す梓くん
たったの2週間ぶりなのに
なんだか懐かしくて心地いい。





「ゆあぁあああああっ」





三人で話していると
後ろから何者かが
飛びかかってくる






「うわっ!」





「生きてて良かったぁ、うぐっ………」






「泣かないでよ、瑠威」






男子高校生のくせして
子供のようにびえびえ
泣きじゃくる瑠威に
思わず笑いが溢れる





「大袈裟すぎ(笑)」





「だってぇええ………ぐずっ」






「お前ら、新学期そうそううるせえな」






こ、この不機嫌な声は!?






バッと振り返ると
案の定そこには
紀田がいて…………






「あ、あの紀田………」





なんかいろんな意味で
ドキドキする!!!





「よお、ゆあ。久しぶり」



あれ?






以外と普通?





「何、突っ立ってんだよ。早くしないと遅刻すんぞ」





あまりの彼の普通さに
呆気にとられ






ボーッと立ち尽くす私に
紀田が笑いながら言った。





ーーーーーーーーー





「ゆあー、帰ろうぜ」




始業式だけだったので
今はもう放課後





「ごめん!私、用事あるから!」





「ちぇ…………何だよ、紀田とデートか?」





ブスッとした顔で
拗ねる瑠威





デートってことは
私、やっぱり紀田の
恋人なんだーーーーーー





「あのね、実はね………」





私は自分の今の現状を
包み隠さず話したーーーーー
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