となりの紀田くん



ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー





「えぇえええ!?記憶がない!?紀田のだけ?」





「そうなの……刺された時のショックで記憶の一部を無くしちゃったみたいで………」






「じゃあ、俺のことは?」





瑠威の質問に
一瞬ポカンとする私





「やだなぁ、瑠威のことはちゃんと覚えてるよ。」






「じゃあ、告白は?」





「告白?」





「俺の告白」





ドキンッと
とびはねる心臓





瑠威の告白…………





あれ?私、瑠威に
告白なんてされたっけ?





記憶の片隅にあるのは
幼い自分と幼い瑠威。




幼馴染みとしての
好きなら交わしたけれど





「ごめん」





「いや、いいよ………。もう一度言うから………記憶なんて無理に戻す必要なんてないよ。俺はゆあが好きだ…………幼馴染みじゃなくて、一人の女の子として………」






ボッと熱が上がり
赤く染まる私の顔





い、いま、いまっ





告白された!?





「これからは俺の事も、ちゃんと視野に入れてよね?」





不敵に笑いながら
手をヒラヒラさせて
去っていく瑠威の背中を
ただボーッと眺めていた。





ーーーーーーーーーーーー





しばらくその場に
ボーッと立っていた私





キーンコーンカーンコーン





チャイム音で我に返った私は
両手で頬を触る





「まだ………熱い。」





私、瑠威に告白された。





「おい、バカ猿。そこで何してんの?」





「うわぁっ」





急に声をかけられて
驚いた私は間抜けな
声とともに





魚のように飛び跳ねて
反射的にそれを避ける。





「いや、本当………何してんの?お前…………」





訝しげな顔で
私を見下す紀田





「もう!驚かせないでよ!」





「別に驚かせてねえよ。つーか下校時刻とっくに過ぎてんだけど。」






一瞬にして無表情に戻った紀田が
鞄を担ぎ直しながら私に言う。





本当に普通だな…………
私のこともう怒ってないのかな?





「何、見てんの?早く帰るぞ」





そう言って私を
ヒョイッと持ち上げる





「わわわ!」





お、お姫様だっこ!?
< 304 / 370 >

この作品をシェア

pagetop