となりの紀田くん



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「もーすぐ修学旅行だね!」






「うん、楽しみ!」






あれから約2ヶ月
何も思い出せないまま
月日だけが流れて行く。






紀田は思い出さなくていい
なんて言ったけど…………





それは私が嫌だから
思い出したい。
だけど何をしても
全く効果なし。






無茶をすると
頭痛が酷くなるばかりで
思い出せない自分に
イライラしてくる。





「沖縄だよね?」





鈴の質問に
頷いて答え





「そだよ!」




グーっと親指をつき出す。






「買い出しは二人で行こうね!」





笑顔の鈴は天使みたいに
可愛い………





「もちろんっ」






「じゃあ、ゆあ………私、梓くんの部活見に行くから」





「あ、うん!バイバイ」






放課後の廊下を歩く私と鈴
途中で別れて一人
下駄箱まで歩く………






沖縄かぁー
海とかめっちゃ綺麗そう!






11月だし入れないとは思うけど
見るだけでも十分だよね。






そんなことを考えながら
靴に履き替えて
正門まで歩く






門の出口に差し掛かった
ところでーーーーーーーーー






「ゆあちゃん」







声を掛けられたーーーーー






長身で細身で
とても整った顔立ちの
お兄さんが





私に向かって笑いかける。





誰だろー?
なんで私の名前を
知ってるの?





「あの、どちら様でしょうか?」





「嫌だなー、忘れちゃったの?」





悲しそうに笑う彼の顔が
とても誰かに似ている
ような気がする。





でも、それが誰かさえも
思い出せない…………






彼が一歩私に近づく
その瞬間ブワーッと
風が吹いて髪が靡く。





彼はそれを手で
かきあげながら






「不知火 昴…………君の恋人だよ」






そう言って悲しげに笑った。
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