となりの紀田くん



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「不知火 昴…………」





お風呂に浸かりながら
そう呟いてみる





"君の恋人だよ"





彼は確かにそう言った。





そんなハズはない…………
だって私の恋人は紀田なわけで






でも待って……………





よくよく考えてみれば
紀田と恋仲っていうのだって
事実かどうか分からない。






なんせ、何一つ
記憶がないのだから………





でも、紀田が嘘ついてる
ようにも見えないし…………





逆にもし不知火 昴が
嘘をついているのだとしたら
あの悲しげな顔の理由は
何だったんだ?





考えてもわからない…………





「あぁあああああっ!!もうっ!!」





頭をグシャグシャと掻いて
湯銭に顔を沈める





一体どっちが本当で
どっちが嘘なの?





いくら考えても
答えの見えない問題ーーー





お風呂から上がって
リビングのイスに座る。





「姉貴、遅かったな………」





「あー、考え事してたからね」





心配そうに私を見る柚に
ボーッとしながら言葉を返す。





「姉貴…………何か思い出せたか?」





柚の質問に首を横に振る。





「そっか…………まあ、大丈夫だって、気にすんな!そんなことより無茶するなよ?」





笑顔で私の背中を
叩いた柚





「うん、ありがとう」




なんか、柚に
励まされちゃった?
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