となりの紀田くん
「はい、こちらが美ら海水族館でございます」
井形さんの声と共に
バスが停車する。
「うわぁ//////」
その壮大なスケールに
感動する私
「瑠威!早く行こっ!」
「うぉっ!?ちょ、ゆあ!!」
もたもたしている
瑠威の腕を引っ張って
引きずるように歩く
あー、楽しみだな!!
ーーーーーーーーーーー
「瑠威!見て見て!これ、可愛いーっ!あっちにはサメがいるよ!」
海の生き物たちに
大はしゃぎする私に
瑠威が困ったように
でも優しく微笑む。
「瑠威………」
ふと後ろから
瑠威を呼ぶ声がして
振り返ればそこには
にっこりと微笑んだ
井形さんがいた…………
ゆっくりと瑠威に
近づく彼女。
心なしか私を
睨んでるように見える。
「ーーーーーーーーっ!!こんなとこで普通に話しかけるなよ!他の生徒に怪しまれるだろ!?」
慌てた様子で
井形さんを怒鳴った瑠威は
ごめん。とだけ私に言って
私が引き止める間も無く
井形さんの手を掴んで
去っていったーーーーーー
何だろう。
さっきまで楽しかったハズなのに
今はちっとも楽しくない。
このモヤモヤした気持ち。
一体、二人はどんな
関係なの??
本当は井形さんが
好きなんじゃないの?
そんな、どうしようもない
思考が私を支配して
苦しくなる……………
井形さんと仲良くしないで
井形さんに触れないで
私に触れてよーーーーーー
「気になるなら、追いかければ?」
横からいきなり現れた人物に
驚いて目を丸くする
「紀田………」
「追いかけなくていいの?」
「どうして?」
昨日あからさまに
私を無視した人物が
今日は普通に話をかけてくる
紀田は何がしたいの?
意味がわからない。
「何で私が?追いかける必要なんて………」
そう、紀田は知らない。
私が瑠威を好きなことも
私が瑠威と付き合ってることも
「じゃ、なんで泣きそうな顔してんだよ………相変わらずバカだなお前。」
へ?
紀田に言われて初めて
ガラスに映った自分の
表情を見るーーーーーー
本当だ………
泣きそうな顔してる。
そう思った途端
ぶわーっと溢れ出す涙。
追いかけたい!!
なのに足が動かない………。
勇気のない私は
真実を知るのが怖いから。