となりの紀田くん
「好きなんだろ………?瑠威のことが…………」
え……………?
そう言って微笑んだ紀田は
誰よりも優しくて。
紀田…………知ってたんだ………。
「うん!」
「なら行けよ、早く」
紀田の一言で
今まで重かった足の
鉛が取れたみたいに
軽くなって
私は全速力で走り出したーーー
ありがとう紀田。
ーーーーーーーーーーー
「瑠威!!」
「あら?あなたはゆあちゃん?」
「る、瑠威は!?どこ行ったんですか!?」
「瑠威なら、もう行ったわよ。」
嘘っ!?
じゃあすれ違っちゃったんだ!
「そうですか!じゃあ、私はこれで!」
「待って!」
勢いよく走り出そうとした
私の手を強く握りしめて
にこやかに笑う井形さん。
「ーーーーーーーーーっ!」
「あなたみたいな凡人が瑠威と付き合ってるって?笑わせないでよ」
そう冷たく言いはなって
私の手を掴む力を
より一層強くする
「痛いっ!」
「そうでしょうね。だって痛くしてるんだもの………」
妖艶に微笑む彼女は
もう悪魔にしか見えなくて
「瑠威と別れて、これ以上瑠威に近づかないで」
何を言い出すんだ………
せっかく両想いになって
好き同士で付き合ってるのに
何で別れなきゃいけないの?
「瑠威とは別れません!!」
「ふーん。じゃあ、それならいいわ」
私の強い言葉に
簡単に諦め発言をする
井形さんに腹が立つ
なんなの?
バカにしてるの?
からかってるの?
「なら紀田くんはどう?」
「え?」
急に井形さんの
口から出た単語に
驚きを隠せず
そう呟く。
何で井形さんの口から
紀田という単語が出てくるの?
「紀田くんってカッコいいじゃない?瑠威よりもね………。瑠威よりセックスも上手そうだし」
そう言って自分の指を
唇に当ててニタリと笑う
そんな言葉聞きたくなんて
なかったーーーーーーーーー