となりの紀田くん



何度も確認して
電話したけれど


結局ダメで…




「ケータイ、トイレにでも落としたのかな?」



なんて呑気な事を
考えながら



今度は要さんに
電話をかける



何度かコール音が鳴り



「もしもし…」



透き通った綺麗な声が
私の耳に届く。



「要さん久しぶり!!」



「何?私、今忙しいんだけど?てか、もちろん見送りに来るよね?」



見送り……?
何の話?



「おい、要。早くタクシー乗るぞ。空港に間に合わない。」



電話の中から微かに
聞こえた紀田の声



空港って……?



「要さん…それどういうこと?」



「はぁ?あんた裕也から何も聞いてないの!?…ちょっと裕也!それくらいちゃんと言っときなさいよ!」



「言わなかったんじゃない…言うチャンスを逃しただけだ…」



言うチャンスって昨日のこと?
昨日…紀田は私にそれを
伝えようとしてたんだ…




「とにかく!私たちは色々な用があって、しばらくアメリカに発つの…だから…あっ!ちょっと!……」



ツーッツーッと
電話が切れた音が
鳴り響くーーーーーー




アメリカ…?



それってもう紀田に
会えないってこと…?



棗さんのことまだ
聞いてないよ?



何もなかった?
何もされてない?



毎日…無愛想な
おはようすら
聞けなくなるの?



そんなの嫌だ!!
そう思ったら無意識のうちに
家を飛び出していたーーーーー。
< 352 / 370 >

この作品をシェア

pagetop