となりの紀田くん



「私ね…」


自分がバカすぎて
涙がボロボロ流れ落ちる




「全部思い出したの…」



「え?」


みんなの驚きの声が
重なって響く…




「紀田のこと思い出したの…」



そう言って涙で
ぐちゃぐちゃになった
顔を両手で覆った。



今更、思い出すなんて
神様はなんて残酷なんだろう


紀田は私と瑠威を
どんな気持ちで見てた?



どんな思いで応援してたの?



そう思ったら
胸が苦しくなって
いっそう涙が溢れた…



「ごめん…みんな心配かけて…しばらく一人にして…」



自分勝手な私は
みんなを帰らせると
ただボーッと



天井を見つめた。



何で忘れていたんだろう
こんなにも好きなのに



自分がむかつく…
腹たってしょうがない



けど、どうすることも出来ない。
そんな自分が嫌で目を閉じた。



もう彼に自分の
気持ちを伝えられないなんて
こんなにも辛いことが
あるだろうか…?



なにより紀田を
傷つけていた自分が
凄い憎らしい…



私が一人泣きながら
布団に包まっていると…


ガラガラッと
扉が開いたーーー


「瑠威まだいたの?一人にしてって言ったのに…」



力なく呟くと



「ゆあ…」


低くて透き通った
私の大好きな声が
病室に響いたーーー。
< 355 / 370 >

この作品をシェア

pagetop