となりの紀田くん
嘘でしょ?
思わずガバッと
起き上がる…
まさかここに
紀田がいるわけ…
カーテン越しに
みえるシルエットが
私のベッドへ近づき
カーテンを開く
その瞬間私は
また涙を流したーーー。
「会ってそうそう泣くなよな。バカ猿は、ほっておくとマジで危なっかしいな…」
仏頂面で文句を言う紀田
うん、覚えてる…
この冷たくて優しい眼差しも
低くて透き通った声も
仏頂面に見えて実は
心配してる顔も
全部覚えてる…
「紀田…大好き」
気づけば無意識の
うちにそう呟いていた…
紀田は一瞬、驚いたような
顔をしてすぐに私を
思いっきり抱きしめた。
「私ね…全部思い出したの。ごめん、傷つけて…。ごめん勝手に記憶なくして…。ごめん…ごめんね…。」
さっき…あれだけ泣いたのに
涙は枯れることを知らなくて
ポロポロと大粒の涙が
紀田の肩に染みていく。
「もう…無理だと思ってた…。謝んなくていい!!思い出してくれた…それだけで十分なんだよ!!」
そう言って
より一層私を強く
抱きしめる…
この暖かい腕に
包まれる感覚が
とても懐かしくて
「ありがとう…。私は紀田が大好き。また恋人になってくれる?」
涙でぐちゃぐちゃの
笑顔で問いかけると
返事のかわりに
私の唇を奪ったーーーーー。