となりの紀田くん



「これから俺はアメリカへ行く…。昴さんと決着をつける為に、要とアメリカへ行く。だから待ってて欲しい。」



いつも俺様な紀田の
口調が弱々しくなる



抱き寄せられてる私は
紀田が今、どんな顔
してるのかなんてわからない。




「昴さんと決着って、どういうこと?どうしても行かなきゃダメなの?」




震える声を一生懸命
絞り出しながら



言葉を繋げる



「必ず、帰ってくる。卒業式までには帰ってくっから…。みんなで卒業してぇし。絶対、ゆあの元に帰ってくるから…」



思い切り抱き寄せられた
紀田の体温から



嫌でも伝わってくる
彼の本気の声が…



私が紀田を信じなくて
どうする?



今の私には
紀田を笑顔で
見送ることでしょ?


するとガラガラッと
扉が開き



要さんが不機嫌
オーラを放ちながら
中に入ってきた。



「ちょっと…早くしてよ。無理言って便、遅らせてもらったんだから…」



仁王立ちで私たちを睨むと
付け足すように



「大丈夫よ。私はもう裕也のこと何とも思ってないから。信じてあげて」



それだけ残して
病室を出て行った…。



要さんのおかげて
私の中で何かが
わかった気がする…



「俺のこと待てるか?」



似つかわしくない
不安顏で私を覗き込む紀田



そんな顔しないで
貴方には笑顔が一番
似合ってるーーーーー。



「待つよ…私。だから必ず帰って来てね!!卒業式までに必ず…」



笑顔で送りたいのに
上手くいかなくて


涙でぐちゃぐちゃの
笑顔を紀田に向ける



それでも紀田は笑って
再び私にキスを落とした。



「左手出して」


突然そんなことを言われて
意味不明に思ったが



言われたままに
手を差し出すと



一つのリングが
私の薬指にはめられたーーー。
< 358 / 370 >

この作品をシェア

pagetop