となりの紀田くん



長い長い卒業式が終わり
みんながそれぞれの場所へ
旅立って行く中




私は無心状態で
教室に残っていた。




卒業式が終わっても
紀田は帰って来なくて…




嘘つき…
帰って来るって
言ったのに…



涙すら流さない私を
心配してか



「きっと何か事情があって帰れなかったのかもよ!大丈夫だよ!すぐ帰って来るって!」




鈴が私を元気づけようと
してくれている



けど、返事する気になれない
私は、窓の外をずっと
眺めていたーーー




ーーーーーーーーーーー!?



すると突然視界に
人影が映った。



窓の外…ちょうど正門から
一人の男子生徒が校舎に
向かって歩いて来てる




紀田!!




金髪で仏頂面で
遠くからでもすぐ分かる




その瞬間、無意識に
走り出していたーーー




「ゆあ!?」



何も気づいてない鈴が
私の名前を呼んだけれど




止まることなく階段を
駆け降りて上履きのまま
校舎を飛び出す。



ほらやっぱり…
紀田だった



「嘘つき!!一緒に卒業するって約束したのに!!ばかばかばか!!」



今まで全く流れる
ことのなかった涙


けれど紀田の姿を
捉えた途端



涙腺が壊れたみたいに
涙が溢れ出る



紀田に抱きつき
ヒステリックに叫ぶ
私を引き離すと




「わりぃ…遅れた」



申し訳なさそうに
頭をポリポリとかく



ばか…本当に
帰って来ないかと
思っちゃったよーーー
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