となりの紀田くん


「あいつ居なくなったし、俺が送る」




ビクッ



紀田がいきなり言葉を発するから
驚いて体がビクつく




なんか…………意識したら
恥ずかしくなってきた。



「い、いやいいよ!悪いしっ!」




「ばか。こんな暗闇に女一人を放り出すことなんてできねぇだろ。」




いつもと変わらない無表情なのに……………





いつもと変わらない偉そうな口調なのに………




どこか優しくて………




「うん、ありがとう……」




私は素直に従ってしまった。




それがいけなかったんだ…………




ーーーーーーーーー



「あうぅ………」



午後7時といったら
ちょうど、帰宅ラッシュ時



満員電車で人々に
押し潰されながら
必死に耐え続ける





で、でも………もう苦しい




フワッ




そう思ったのと同時に
目の前に紀田がドアップで表れた。




「き、紀田!?」




私の言葉には返答せず
私を守るように両方に
手を添えて包み込む




あ………苦しくなくなった。




いつも意地悪な紀田が
急に優しくなるから
私はさっきから紀田に
戸惑ってばかりいる………




そしてあまりの
距離の近さに心臓が
バクバクする………。



どうしたんだ私……
落ち着けよ………

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