となりの紀田くん
「………紀田?」
私が不思議に思い
顔を覗き込もうとすると
「ば、ばか!見るなっ………」
思いきり抱き寄せられた……
ってバカ!!!
ゆうやくんの前で
何してんだよ!!
さらに私の顔面が
紀田の胸板にすっぽりと
はまっていて身動きがとれない
つぅーか………苦しいっ!!!
酸素!酸素!酸素!
「はーい、じゃあ写真現像してきましたぁ。」
現像に行っていた記念撮影の
スタッフさんがにこやかに
戻ってきた……その声でバッと
離れる…………
あ、危ない!!
ギリギリで見られなかった!
「はい、どうぞ」
私と紀田は写真を受け取って
その場を後にした。
ーーーーーーーーーー
さっきの紀田………
なんかちょっと変だったな
「もう、日が暮れてきたな」
「だねー」
さっきは確かに変だったのに
それがまるで嘘だったかのように
今はいつも通りの無表情
ゆうやくんと手を繋ぎながら
トボトボ歩いていると
「ゆうやっ!!!」
前から声がした
「ママっ!!!」
ゆうやくんが私たちの
手からすり抜け勢いよく
走り出したーーーーー
私たちもゆうやくんの
後を追いかける