となりの紀田くん



「何してんだよ!?」





そんな怒鳴り声と共に
紀田が猛スピードで走ってきて





いつも余裕な彼が
余裕を無くした表情で
昴さんを突き飛ばす





しかし尻餅をつくことなく
すぐに体制を整える
昴さんの表情は笑顔を崩さない






「なに、今さら?ゆあちゃん泣かせといてさ……お前には要がお似合いだよ」





「黙れよ!!あんたは昔からいつもそうだ……俺が大切にしてるものを横から奪っていく……」







紀田が自分の
Tシャツを脱いで
私に着せ






昴さんを鋭く睨み付ける






「はっ………ハハハ。裕也は被害妄想が激しいな………」







「被害妄想だと?………笑わせんなよ」





昴さんの言葉にフッと笑って
いつもの余裕な表情に戻る





全然、話の状況が
掴めないんだけど………





昴さんが紀田の大切なものを
奪うってどーゆーこと?






「俺はもうあの頃みたいに無力なガキじゃねぇ……何があってもこいつ………ゆあだけは絶対に渡さない……誰にも渡さねぇ。」






そんなことを言いながら
私の顔をチラッと見て
再び昴さんに向き直る






「特に昴さん………あんたにはな。」






紀田が目だけ笑ってない
笑顔で昴さんを指差す






「へぇ………面白そう。まあ、俺は諦める気なんてさらさら無いけど……」






「知るか、次、ゆあに手を出したら容赦なく……ぶっ殺す」






「おー怖い怖い。じゃあ………またな裕也」





昴さんが手をヒラヒラ
させながら去って行く





私はその背中が見えなく
なるまで睨み続けたーーー

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