となりの紀田くん
「や、やばい!ちょーイケメンなんだけど!!!好みだわ!」
「うわー、まじないわ。紀田レベルのイケメンがもう一人とか、俺あと半月このクラスでやっていける気がしない」
みんなの声が飛び交う
確かに転校生は誰がどうみても
イケメンだと言うだろう
少し茶色がかった髪を
ワックスで後ろに流していて
顔も本当に羨ましいくらい
1つ1つのパーツが整っている
おまけに長身で痩せているのに
それなりの筋肉がついていて
まさに男の中の男。
転校生は黒板に
自分の名前を刻むと
みんなの方へ振り返る
その瞬間ーーーー
ばっちりと目が合ったが
私はすぐに反らした
竹中 悠斗
間違いなくそう黒板に
書かれていた
「西耀学院から編入してきました、竹中 悠斗です。みなさんどうぞよろしくお願いします………特に内倉 優亜さん………ね?」
そうやって妖艶に笑う彼
容姿や声で……嫌でも
元カレの悠斗だということが
わかってしまう………
悠斗が私の名前を呼んだ瞬間
みんなの視線が私に集まる
な、何で私の名前を
口に出しちゃったかな!?
ただ紀田と鈴だけは
私じゃなく悠斗を見ていた
鈴は驚きの眼差しで。
紀田はかつて見たこと
あったような鋭い目付きで
悠斗を睨み付けていた。
「なんだ、竹中は内倉と知り合いなのか!じゃあ…紀田、お前窓側の一番後ろが開いてるから、そこに移動しろ」
移動しろ…………って
はぁあああああああああっ!?
なにぬかしてんだ糞教師!!
「先生……あまりにも唐突すぎじゃありませんか?」
紀田が冷静に………
しかし酷く冷めた声で
いい放つーーーーー
「いや………知り合いの近くにいた方が何かと都合がいいかと思ってな………な?竹中。」
「ええ……そうしてもらえると有り難いですね…」
ゆ、悠斗まで!!
つーか、いつも適当なくせに
こんな時だけ気を使うな!!
尼川 秋のバカやろぉおおおおおおおぉーーーーーーーっ!!
私は口に出せない怒りを
自分の心の中にぶつける
紀田は悠斗を睨みながら
黒いオーラを放ち
荒々しく手にカバンを取ると
窓側の一番後ろの
席へと去っていったーーー
や、やばいぞこれは!!!
紀田が………紀田が
ガン切れしていらっしゃる!!
とか言ってる自分も
紀田と席が離れて
だいぶショックを受けている
「はい……じゃあ竹中は、あそこな」
そして先生に促されるまま
私の隣の席に腰を降ろす
「久しぶり……ゆあ。」
ああ………
どうしてこうなった?
これから嵐が巻き起こる
予感しかしません。切実に。