夢物語
一章

ねぇ

夜、静かな空気を纏う薄汚い道を、音楽を聴きながら歩くのが好きだ。

コンビニでアイスとスイーツを買って、そのアイスを食べながらただ歩く。

家へ向かうわけでもどこに向かうわけでもなく、もう知り尽くしているその道を、まるで初めて歩くかのように歩く。

かける音楽は音が少なめで少しテンポが遅いものがいい。

音より歌手の声がよく聞こえる。

そんな曲を聞きながら空を見て、今日の星の位置を確かめる。

....昨日と変わっているわけではないけれど。

本当は少しずつ動いているけど、私の視力じゃそんなのちっとも分かりはしない。

「あ」

気づけばもう家の前に立っていた。

もう少し外にいたいけど、初夏とはいえ少し肌寒くなってきた。

「....はぁ」

仕方ないから今日はもうお開きだ。家に入ろう。

扉を開け部屋に入ると見えてくるのは散らかった部屋。

散らかったカッターに散らかった市販薬。

脱ぎ捨てられた服に医者からもらった睡眠薬。

「はぁ」

何回目かのため息をつく。

「今日もまた、生き残ったのか。私は。」

どうしてか、短く乾いた笑いが漏れた。

「変われないなぁ。」

コンビニのレシートを取り出そうと財布を開くと、パサっと何かが落ちた。

拾ってみるとそれは、懐かしい高校時代のプリクラだった。

そこに写ってる6人の少女達は、ポーズこそ取っていないがみんな笑顔だった。

「懐かしい。」

あの頃はいつだって、自分達が1番で何もかもが楽しかった。

嫌いなテストや嫌いな教師でさえ、私達が楽しくあるための道具にすぎなかった。

高校での思い出は、私にとって素晴らしいものだった。

そう。過去形。

「....明日か。晴れるといいけど。」

買ったものを乱暴に冷蔵庫に投げ入れ、さっさとシャワーを浴びた。

髪をタオルで拭きながらノソノソ歩いていると、下を見ていなかったがために盛大に机にぶつかった。

「いっっったぁ....。」

その衝撃で机にばら撒かれていた薬が床に落ちる。

私はそれを見つめるだけだった。

それを片付けずに、机だけを直して髪を髪を乾かしてからベッドに入った。

私は死ぬのが怖い。

こんなにも死んでしまいたいのに。

だから誰かに死なせてほしい。

でも臆病者の私は動けない。

神様はどうして私をつくったの。

もう、壊しちゃってください、こんな不良品。

神様、どうか、明日死ねますように。
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