私の…手…! プロポーズは大好きな花に囲まれて。
「花井さんに、お会いしたかったの、こんな形でごめんない、いつも素敵なお花ありがとう」
花井さんはちょっとキョトンとしながら、それでも必死に首を左右に振る。
祖母は花井さんの左手をそっと包み、昔話しを始めた。
「……今の会社は主人と私、数人の従業員で始めたのよ、毎日が油まみれでね、手について油は洗っても中々落ちなくて、主人は魔法の手だと大切にしてくれたのよ。ある時ね、息子が友達に私の汚れた手のことでイジメられて、涙がでたわ、でも息子は負けずに私の手が大好きだとハッキリたのよ、もう嬉しくて。
私の手で作ったおにぎりも美味しいと食べてくれて救われたわ」
だから、花井さんの手も魔法の手なのよ。
…… ゆずるを信じて……
私はいつのまにか、ほほに涙がつたい、あとから、あとから、流れ止めることが出来ず。
心の中のトゲが剥がれ、溶けていき、あの時の天気雨から虹が架けられていく。
宝木さんが私の手に優しくキスをする、一瞬涙は止まったけど、やっぱりまた流れはじめて。
……俺はこの手が好きだ……
ずるいです。
私はまだ、手袋を外していない、今までは見られたくない、恥ずかしい、でも、これからは違う。
私の大切な手。
自分の手にキスをする、今日もよろしくね。