私の…手…! プロポーズは大好きな花に囲まれて。

 夜、ホテルまでタクシーで向かい、ゆずるさんの両親とラウンジで合流、予約した寿司屋さんへ入って行った。

 店長おまかせコースをお願いして、一品ずつ素敵な和食器に盛り付けされた料理を堪能し、メインのお寿司で初めての大トロをゆっくり口に含む。

 言葉に出来ない旨味が広がり、無意識に両手が頬を挟み「溶けちゃった」と言葉に出てしまった。

 ゆずるさんは私の頭をポンポンとしながら「来て、良かったな」と

 「また、必ず一緒ここに来よう」
 

私は美味しくて、嬉しくてただ頷いて、何度も「うん、うん」と、そんな私を両親が見ながら微笑んでいた。

私は何だか急にはずかしくなった。


 バカな行動をしてしまって高級はお店なんて初めてだから。


 ゆずるさんの相手は本当に私で大丈夫なのかなぁ、心の隅で考えてしまう。


 ホテルのラウンジでゆずるさんの秘書の方を紹介された時、秘書の奥様が凄く綺麗な人で元モデルらしい。


 だから余計に考えてします。

 ダメ、ダメ
 自分で自分を落としてどうする、こんな楽しい時間に。

 心の中で頭をフルフルと嫌な考えを追い出す。


 心を切り替えなくちゃ。

 最後のデザートが終わるまで笑顔で頑張った……
 

  …ちょっとトイレに行きたいなぁ…


 私はゆずるさんにそっとそのことを伝える。


 「一緒に行こうか、場所分かる?」


「 はい、大丈夫です。」


 そっと席を立ち、トイレに向かった。


 
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