私の…手…! プロポーズは大好きな花に囲まれて。

 「そんな手でよくこんな高級ホテルに入れたなぁ…、場違いだろう」


 やめて、お願い、それ以上は何も言わないで。足が少しずつ震えてくるのが分かる。


 「恥ずかしい思いをする前にに早く帰れ、元彼として忠告してやるよ」


 私だって自分に相応しい場所なんて思ってない。それでも今日は……


  元彼は不意に私に近づいてきて、手首を握り出口まで連れていってやる、なんて言ってきた。


  「やめて!」


 私は必死に抵抗するけど……


 冷たい視線を向けて、「笑われる前に帰れ」と

 「仕事の仲間と一緒に来てる、おまえがいたら俺が笑われるんだよ」


 冷たい声でハッキリと言われ、言葉が出なくなった。


 「なんで、ここにいる?まさか、今更俺を?」


 あなたなんか、関係無いと言いたいのに元彼からの視線が怖くて声が出てこない。


  「おまえと、付き合ったせいで俺がどれだけバカにされたか、汚い手の女なんて言われたんだ!」


なんで、こんな事を言われなくてはいけないの。

 私は彼にどんな酷いことをしたの?


  私がゆずるさんの側にいたら彼も回りの人達に同じことを言われるのだろうか。


 ……側にいたらいけない、イヤな思いはして欲しくない……


 私の手は……そんなに悪いのか!


  泣きたくなってきた、でも涙は出ない。



   



 
 
 「その手を離せ、俺の妻に何をしてる」 


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