捨てられママでしたが、天才外科医に独占欲全開で溺愛されています
「中山さん、波が来たらいきむわよ!」

あぁ…
うーん…

「そろそろ来ますよー!」

うーん…

「はい、頑張って!」

うぅーん…

「さぁ、ハッハッハッってしよう。」

ハ、ハ、ハ…
もう力が出てこない。
痛いだけで何も考えられないよ…

「千佳!がんばって。あと少しだよ!」

頷くことしかできない。

「さぁ、また来ましたよ!いきみますよ!フゥーンってお尻の方に力入れて!」

フゥーン…
奥歯がきしむように食いしばる。

「そうそう…上手よ。髪の毛見えてきてるわよ。」

ハッハッハッ…

「あと1回で出るわよ!」

頷く。

「さぁいこう!中山さん。赤ちゃん出るわよー!長くいきんで。」

うぅーん…

オギャア、オギャア…

「おめでとうございます!男の子ですよ!」

赤ちゃんはすぐに私の胸元に乗せられた。わたしは恐々と抱き抱えていると助産師さんは臍の緒の処理や胎盤を出してくれる。

隣を見ると真帆が携帯片手に大泣きしていた。

「ちかぁーーー。おめでとう。おめでとう…。」

大泣きのまま私に抱きついてきた。
赤ちゃんも一緒にみんなで抱き合っていた。

周りのスタッフがその姿を写真に収めてくれた。

「千佳、がんばったね!すごいよ。私感動した。千佳〜!」

「真帆、ありがとね。真帆が来てくれなかったら頑張れなかったよ。ずっとさすってくれて励ましてくれてありがとう。お陰でこの子に会えたよ。」

私はすごく疲れているのにアドレナリンが出まくってるのか興奮している。

赤ちゃんは私の胸に顔を擦り寄せまだ小さな声でグズグズ言っている。

なんて可愛いんだろう…

なんて柔らかくて温かいんだろう…

この子を幸せにしてみせる。

私は強く心に誓った。
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