捨てられママでしたが、天才外科医に独占欲全開で溺愛されています
私がご飯を食べ終わってもまだ智也はおとなしく寝ていた。
こんなに寝ているなんて信じられない。

智也のことを話すと、
「千佳ちゃんの不安が移ってともくんも不安だったんじゃない?だから常にそばにいて欲しかったのよ。」

「うん…。」

「赤ちゃんって案外強いのよ。泣いてても歌でも歌ってたら気が紛れてともくんも泣き止むわよ。千佳ちゃんの声が聞きたいんだから。千佳ちゃんのお腹の中でずっと聞いてたんだもの。千佳ちゃんの声が聞こえたら安心するはずよ。」

「うん。」

「必殺技は掃除機ね!心音に近いらしくて、掃除機かけると寝るってよく聞くわよ。」

「うるさくないの?」

「静かな方が嫌なんですって。今まで千佳ちゃんお喋りしてたでしょ?テレビも見てたでしょ?今まで聞こえてたものが聞こえなくなる方が寂しくて泣きたくなっちゃうんですって。」

「そっか。私は静かにしなきゃってずっと思ってた。」

「ねぇ、千佳ちゃん。お昼寝もしてきなさいな。ともくん起きたらミルクあげておくわよ。1回くらいオッパイじゃなくても死なないわよ。顔色悪いもの。私も頼ってくれたら嬉しいの。ともくんのことは任せて。」

「でも…。」

「大丈夫。どこかいくわけじゃないんだから困ったら起こすわよ。」

「本当にいいの?」

「もちろんよ。」

「さ、早く横になりなさい。」

「うん…。」

お母さんってこんな感じなんだろうな。
お産して里帰りするってこんななのかな。
私は育児も手探りだけどお母さんがいたら教えてくれるのかな。
ご飯を作ってくれるのかな?

私は色々考えていたけどお腹もいっぱいになり、布団に潜るとすぐに寝てしまった。

ふぇ、ふぇ…と泣き声が聞こえてきた。
あ、と思い目を覚ますと既におばちゃんが智也にミルクをあげるところだった。

「まだ大丈夫よ。」

「でも…。」

「もうちょっとだけ見ててあげるから。寝ておいで。」

「いいの?」

「もちろんよ。」

私はまたすぐに眠りついた…。
久しぶりにぐっすり、深く眠れた気がした。
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