捨てられママでしたが、天才外科医に独占欲全開で溺愛されています
日は暮れて来て薄暗い。
肌寒くなって来た。

「千佳、風邪を引く前に場所を移そう。」

「うん。うちに行こう。」

「いいのか?入って。」

「うん。」

「ともくんそろそろ帰るよー。」

「あーい」

砂を払いおもちゃを片付ける。

智也が砂場から出てくると俺のところにやってきた。

もしかして…

手を伸ばすと智也も手を伸ばしてくる。
俺は抱き上げた。

なんて可愛いんだろう。

歩きながら車を見つけると「ブーブ」と言い、犬を見つけると「ワンワン」という。

うんうん…

俺も一緒になりいろんなものを見つける。

こんな幸せな時間があるなんてさっきまで思いもしなかった。

「重いでしょ?」

「いや、そんなことないよ。でも…幸せってこういうことなんだと思った。さっき智也が手を繋いでくれた時も、抱っこをせがまれた時も。」

「ありがとう。」

「俺こそありがとな。」

千佳の家に着くと千佳は智也をお風呂に入れる準備をしていた。

「悪いんだけど砂だらけだからお風呂に入れてくる。」

「あぁ。行っておいで。」

「智也は好き嫌いあるの?」
 
「ないけど…。」

「じゃ、冷蔵庫みていい?久しぶりに俺が作るよ。」

「え?」

「前は作ってただろ。」

「そうだけど…。」

「ほら、入っておいで。」

千佳の冷蔵庫は野菜が沢山入っていた。智也に沢山の栄養を取らせたいのだろう。

千佳のキッチンの勝手はわかっている。
何も変わっていない。

俺はウインナーを見つけジャーマンポテトを作った。
豚汁も作るか、と思い肉や野菜を炒め始めた。炒まったところで水を入れ煮込み始めた。

こんな感じなら智也も食べられるかな。

お風呂から出てくると2人は頬を赤くしてとても可愛い。

「ご飯できてるよ。食べるか?」

「あい」

「智也はいい子だな。千佳ありがとう。」

机の前に座ると俺の膝の上に智也が入り込んできた。

「智也、ちゃんとおすわりして。」

智也は俺の膝の上でモジモジしている。

「智也、今日は特別だよ。」

そんなの嘘だ。
俺はずっとこのままでいたい。
膝の上にいる智也を離したくない。

智也が膝に入り込んできた時にまた不覚にも泣きそうになった。

俺は今日1日でどれほど泣くんだろう…

今日の俺は涙腺が緩みっぱなしだ。
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