捨てられママでしたが、天才外科医に独占欲全開で溺愛されています
ピンポン…

「はい」

「俺…」

「うん…」

ドアを開けてくれる。
疲れ切った千佳の顔が見える。

「智也、熱性痙攣したの??」

「うん。」

「今は?熱はどう?」

「まだ高い。突発性湿疹なのかなって言われたけど…。まだ40℃超えてて…。」

「高いな。」

「うん。」

「でも痙攣も治ってるし良かったな。」

「うん。」

「子供にはあることだから大丈夫だよ。」

「うん…」

「人間みんな熱は出すもんだし、熱自体は悪いもんじゃない。ウイルスと戦ってる証拠だし。千佳もわかるだろ。」

「うん…」

「智也の顔見ていっていい?」

「うん…」

玄関で話していたが俺は智也の顔を見たくて寝室へ向かう。

首元を触るとまだ熱い。
だいぶ薄着になっているが体が熱く、千佳が脇の下もクーリングしていた。

俺は頭を撫でて寝室を出た。

「大丈夫か?千佳。」

「うん。」

「どうした?」

「私、昌也には悪いけれどやっぱり過去には戻れない。一緒の道を歩いていけない。」

「どういうこと?」

「ごめんね。やっぱり振り返ったらいけなかった。」

「千佳。ちゃんと話して。言ってくれないと分からないよ。」

「そうだよね。昌也は何もわからないよね。」

皮肉めいた言い方をする千佳が何を言いたいのかわからない。

「ねぇ、千佳。俺に教えてよ。千佳の思ってることを。」

「言わないとわからないんだね。」

沈黙が続く。

「昌也そろそろ帰ってくれる?私も休みたいから…。昌也も明日仕事でしょう。」

「あ、あぁ。」

千佳にあっという間に玄関へ送り出される。

千佳はなんだか疲れ果てていたな…
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