あまりにも遅いから、もうアイツのことは忘れようと思います
とりあえず、適当なワンピースに着替えて外に出てはみたものの、今更料理をする気にはなれなかった。雨は止んでいたので傘は家に置きっぱなし。

適当にファミレスかファーストフード店でも入ろうかと思い、見知った道を歩いてみるものの、顔をあげて歩くことができない。
何だか通り過ぎる人全てが、私のことを見て笑っている気がした。
スーツを着ている人。
子供を連れて歩いている人。
学校帰りの子供。
ランニングをしている人。
決して言葉を交わしたことはないけれど、同じ町に住んでいるから、1度は顔を合わせたことがあるだろう人々に、今の私の情けない顔を見られるのが苦痛で、私はいつも以上に足早に通り過ぎた。

それは、普段なら当たり前に入っていたファミレスやファーストフードでも同じで。
ファミレスにいったならば、きっといつもなら何も気にせず「おひとりさま」で食事を楽しみ、スマホでのネットサーフィングを楽しみ、ドリンクバーの料金の元を取ろうとしただろう。
ファーストフードだったら、コンセント席を占領して充電を気にせずスマホゲームでもしていたかもしれない。

ところが今日に限って、どこかでイベントでもあったのか、家族連れやカップルが多く、密集していた。
私は、ちらとどちらも眺めるだけで、立ち去っていた。

そうは言っても今更自炊をする気にもなれない。
仕方がなく、お湯を注いですぐ食べられるインスタントラーメンだけ、数日分買い溜めすることにしたが、空腹で血糖値が下がっている肉体に、数日分のインスタントラーメンのストックを持って帰る行為は過酷なトレーニングと同じくらい、負荷をかけていた。

しかも、家へ帰る道すがら……。
「あー……傘忘れた……」
雨がまた急に降り始めて来たのだ。
走れば、5分ちょっとで家にたどり着ける。
でもちょっとの時間走るのが、もう辛かった。
一歩でも歩くのが、めんどくさくなっていた私は、雨を凌げそうな高架線下の自転車置き場まで向かった。

「お姉さん、暇?」
なかなか止まない雨にイライラしていた時、チャラそうに声をかけて来た男がいた
< 3 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop