東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
伽藍学園内。
生徒会書記の女の子である。
所用を済ませ、帰る所である。1階と2階を繋ぐ階段の踊り場である。
ふと、人の気配を感じて2階を見上げると見知った顔があった。
「会長!お久しぶりです。元気になったんですね」
「心配してくれたのかい、ありがとう。帰る所?今はよした方がいいな」
会長は屈託ない顔で笑う。
「会長、イメチェンですか?似合ってますよ」
会長の頭髪は、鮮やかな銀髪だった。
「色々あったからね」
会長は笑いながら、右手の指を鳴らす。パチン。
書記の女の子は気を失った。
その体をそっと支えると、踊り場の壁へもたれかけさせた。
「少し休んでいて」
そう言うと、階段を降りて行った。

「せっかくの一撃を邪魔しやがって」
学園の下坂道の入り口、無敵丸甲児である。
助かったとばかり、制服を払いながら藤堂飛鳥は向き直る。
「続けるかい?」
「命拾いしたのに威勢がいいな」
甲児は立ち上がると、お辞儀した。
「無敵丸甲児だ。伽藍学園に用事があるんだが、慣らし運転だよ」
「俺も、同じだ。藤堂飛鳥だ」
ふん。何鼻を鳴らし、甲児がアマレススタイルをとる。
タックルはまずいな。飛鳥は警戒する。
出し抜けに、甲児は右ローを蹴ってきた。バランスは悪いが、疾っていた。
バシン!重い。
体重差のあるローキックは、効く。
飛鳥は耐えた。
2発、3発。
3発目に合わせて、飛鳥のカウンターの右。甲児はガードしたが、反発式のパンチに弾かれて、バランスを崩す。
「面白いなー」抑揚のない言葉。
飛鳥が畳み掛けようと、前進した時、甲児が消えた。スッと自ら倒れながら、体を反転蹴りを放っていた。
延髄斬り。往年のプロレスファンなら馴染みのある必殺技である。
アントニオ猪木や藤波辰巳が有名だが、甲児の使うそれは、天龍式のあまり飛ばない低いタイプである。
がっちり首を掻き切るイメージのそれは、飛鳥の首を刈っていた。
飛鳥はそれを受け止めて、立っていた。
地面に寝そべる甲児に向かって、右パンチを打っていた。
地面を打っていた。
甲児は巨体を丸めると、股の下から這い出ていた。
そちらへ振り向くと、飛鳥の瞳孔は最大限に見開かれた。
甲児の右肩から、白い刀のような物が突き出ていた。
甲児の背後に、白装束の男が立っていた。








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