東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン

辞世の句

辞世の句。
死の間際、この世に残す言葉。

伽藍学園下、坂の登り口、開けた場所。
剣鬼、斜骸丸の放った大剣は骨が集まって出来た奇抜なモノであった。
骨と骨の間は空いているものの、磁力でくっついてあるかのような有様で大剣を形取っていた。
振り抜かれた刹那、その軌道上にある物は寸断された。
そして、その延長線上には運悪く3つの目標物があった。
ひとつは雲のような塊。
遠隔操作、フェイ・ドランの放った幽体離脱系物体アストラル・ワンである。
ひとつは左脚と左腕を失った男。
爆砕打の使い手、マイク・ゴールドスミスである。
ひとつは左脚を失った、筋骨隆々の学生服の男。
藤堂式反発式浄霊術師・藤堂飛鳥であった。

その三様を見事に切り裂いていたのだ。

ここに辞世の句、書き留められてないので想いを示す。


◆フェイ・ドラン
何が起こったか判らなかった。
頭上から下腹部まで、刺すような痛みが走った。途端、その痛みは表面だけではなく内側まで斬られている事を理解する。そう、この敵はアストラル・ワンに攻撃を加える事が出来るのだ。
アストラル・ワンが斬られたのだ。
完全に完璧に。
真っ二つにされた。
血が噴き出るのがわかった。
倒れるのが嫌で、自ら身体を折り曲げ土下座のような姿勢になった。
死を理解した。

自分の半生が巡り回った。

酷い人生だったな。
こんな変な能力、アストラル・ワンが視えたばかりに、変人扱いされて虐められていたっけ。
それなりに楽しい思いもしたけど、アストラル・ワンを理解される事は少なかったから。
日本に来たのは正確だった。
キラーズ・コード。なんの事かは知らない。けど、どうでもよかったんだ。
僕を必要としてくれていたから。
ちょっと強いヤツがいるから、懲らしめてやってくれ。
そんな感じだった。
僕のアストラル・ワンなら訳ない事だったハズだったのだ。
何だ?あの剣士。
僕のアストラル・ワンに危害を加えるなんて…。
理解しかねるよ。

せめて、倒したかったな。

寒い。
地面は気持ちいい。
こうしてるだけで、幸せだ。
このまま眠ってしまおう…。



フェイ・ドラン死亡










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