お前さえいなければ
「入りなさい」
厳格な父親を思わせる鋭い声がし、アヤメは「失礼します」と言って部屋に入る。そこにいたのは、高級な布で作られたスーツを着た父親と、美しい着物を着た母親だけではなかった。
赤いネクタイを締めてスーツを着たエンジと、豪華な花柄のピンク色の振袖を着たミヤコも応接室にいた。二人は並んでソファに座っており、アヤメは訳がわからなくなる。
「どうしてエンジさんとミヤコがここに?」
アヤメが訊ねると、父親は鋭い目をアヤメに向けて驚くことを告げた。
「エンジくんとお前の婚約は破棄する。エンジくんはミヤコと結婚し、私の跡を継いでもらう」
「は?」
訳がわからない。アヤメがエンジを見ると、エンジは一瞬申し訳なさそうな顔を見せたものの、すぐにミヤコの方を向いた。その頬や目には熱があり、アヤメが初めて見る表情を見せる。それを見て、アヤメの足元がガラガラと音を立てて崩れていく感覚がした。
「エンジさんは、ミヤコに一目惚れをしたと言ってくれたし、こんなにも優秀ですもの。きっといい跡取りになりますわ」
厳格な父親を思わせる鋭い声がし、アヤメは「失礼します」と言って部屋に入る。そこにいたのは、高級な布で作られたスーツを着た父親と、美しい着物を着た母親だけではなかった。
赤いネクタイを締めてスーツを着たエンジと、豪華な花柄のピンク色の振袖を着たミヤコも応接室にいた。二人は並んでソファに座っており、アヤメは訳がわからなくなる。
「どうしてエンジさんとミヤコがここに?」
アヤメが訊ねると、父親は鋭い目をアヤメに向けて驚くことを告げた。
「エンジくんとお前の婚約は破棄する。エンジくんはミヤコと結婚し、私の跡を継いでもらう」
「は?」
訳がわからない。アヤメがエンジを見ると、エンジは一瞬申し訳なさそうな顔を見せたものの、すぐにミヤコの方を向いた。その頬や目には熱があり、アヤメが初めて見る表情を見せる。それを見て、アヤメの足元がガラガラと音を立てて崩れていく感覚がした。
「エンジさんは、ミヤコに一目惚れをしたと言ってくれたし、こんなにも優秀ですもの。きっといい跡取りになりますわ」