ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド この世の果て
第1章 出会い
わたしが水田獅堂と出会ったのは高校3年の初夏だった。
高3とはいえ、大学の付属校に通っていたので受験に悩まされることもなく、かといって部活に励むわけでもなく……
今思えば、貴重な青春時代を無駄に過ごしていた。
帰宅部仲間とファストフード店でくだらないおしゃべりに興じてばかりの、非生産性極まる女子高生だった。
たまに誰とも予定の合わない日があると、父の営む喫茶店に足を向けた。
場所は駅から15分ほど歩いた閑静な住宅地。
うちの家は古くからこの辺りの地主で、高い石塀で囲まれ、カシやクヌギやイチョウの大木が林立する鬱蒼としたこの敷地も、父が相続したものだった。
門の両脇には夾竹桃の花木があり、毎年梅雨のころになると濃い桃色の花を咲かせはじめる。
店名は『喫茶オレアンダ』
夾竹桃の英語名にちなんでいる。
いかめしい鉄の門をくぐると、なかばコケに浸食された石畳が50メートルほど敷かれていて、そこを歩いていくと、うす緑色の木壁に黒の瓦屋根の和洋折衷の平屋建てに行きつく。
建てられたのは大正時代らしい。
高3とはいえ、大学の付属校に通っていたので受験に悩まされることもなく、かといって部活に励むわけでもなく……
今思えば、貴重な青春時代を無駄に過ごしていた。
帰宅部仲間とファストフード店でくだらないおしゃべりに興じてばかりの、非生産性極まる女子高生だった。
たまに誰とも予定の合わない日があると、父の営む喫茶店に足を向けた。
場所は駅から15分ほど歩いた閑静な住宅地。
うちの家は古くからこの辺りの地主で、高い石塀で囲まれ、カシやクヌギやイチョウの大木が林立する鬱蒼としたこの敷地も、父が相続したものだった。
門の両脇には夾竹桃の花木があり、毎年梅雨のころになると濃い桃色の花を咲かせはじめる。
店名は『喫茶オレアンダ』
夾竹桃の英語名にちなんでいる。
いかめしい鉄の門をくぐると、なかばコケに浸食された石畳が50メートルほど敷かれていて、そこを歩いていくと、うす緑色の木壁に黒の瓦屋根の和洋折衷の平屋建てに行きつく。
建てられたのは大正時代らしい。