ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド この世の果て
「はい」
 彼はポットからアツアツのコーヒーをカップに注いでくれた。
 両手でカップを持ち、ふーっと湯気を吹いて、一口飲むと、一瞬だけ寒さを忘れる。
 ちゃんとシド兄のコーヒーの味がする。
 しかも寒空の下だから、余計に美味しく感じる。

 でも、やっぱり寒い。
 あらかじめ言われていたので、防寒対策はばっちりしてきたつもりだけど、11月の深夜の寒さをなめていた。
 マフラーのほんのわずかな隙間から、冷気が忍び込んでくる。

 「寒い?」
 シド兄がわたしの顔を見て、訊いた。
「ちょっとだけ」
 答える声が少し震えた。
 彼は自分が巻いていたマフラーを外すと、わたしにかけてくれた。
 そして、そのまま、わたしの肩を抱き寄せた。
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