ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド この世の果て
 1時間ほどしてやってきた沙奈絵ちゃんのやつれた姿に、父もわたしも、そしてシド兄も驚いた。
「どうしたんだい」
「おじさん……」
 沙奈絵ちゃんは出迎えた父の胸に飛びこんで、子どもみたいに泣き出した。
「おいおい」
 父は、彼女をなだめながら奥のテーブルに座らせた。
 わたしは隣に座って、ハンカチを差し出した。
「ありがと……」
 そしてシド兄が湯気の立ったココアを、沙奈絵ちゃんの前に置いた。
「どうぞ」
 甘い香りがあたりに漂った。

 まだ少し鼻をぐずぐずさせていたけれど、少し気を取り直したようで、沙奈絵ちゃんはカップに手をかけた。
 そして吐き捨てるように言った。

「婚約解消したの、昨日」
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