JOKER -東京の片隅で愛を探して-


優しいメロディーが流れる。


透き通っていて、抜群の歌唱力が耳に残る。

画面の下に出されている字幕の言葉を、ひとつひとつ目で追う。





 初めて出会った君はどこか儚い瞳をしていた

 ねぇ、愛ってなんだと思う?そう尋ねた。

 「僕にとっての愛は君だ」と素直に伝えたかったけれど、今はできなかった。

 君の全てを包み込めるほど立派な僕ではなかったから

 綺麗ごとに聞こえるかもしれない

 あの日のサヨナラは、すべて君のためだった

 それでも君がくれた言葉は僕の宝物だ

 一緒に見た朝焼けは、この先一生忘れることはないだろう

 いつかまた、あのOrangeを一緒に見に行けたらいいな






あの日、聞いたことのあるメロディー。

今でも耳に残っている、彼が海でギターを片手に弾いてくれた音楽だった。




初めて聴く彼の声。



少しアレンジが付け加えられていて、まだなかった歌詞が足されていた。






あの日の出来事がフラッシュバックして、勝手に涙が溢れてきた。


言葉にするのは上手くないからと断る彼の想いが、この曲すべてに詰め込まれている気がした。




歌い終えると、行かなきゃ……!と、身体が勝手に動いた。




無我夢中で走った。



気付くと、TV局のある六本木のスタジオまで来ていた。




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