JOKER -東京の片隅で愛を探して-
「先、入って?」
「……未来ちゃんは?入らないの?」
「入るよ?……でも、先入ってて?私、おじさんが入ってる途中に入るから」
意味ありげにそう言うと、彼は照れたように素直に応じてくれた。
「そっか……。分かった、早く来てね?」
「うん!」
とびっきりの笑顔を振り舞いた。
ザァー……ッ
「……♪」
シャワー室からは、呑気な鼻唄が聞こえてくる。
よし、おっさんがシャワーしてる間に金だけ抜き取って……。
鞄、どこだろう?
……あ、あった!
鞄を見つけ、すぐさま中を探り、財布を探す。
「…………」
ない。
財布だけ。
……なんで?