√セッテン
「へぇ、なんか意外だな……いつもオレンジジュース飲んでるなっとは思ってたけど」

「……よく見てるな」

「え、み、見てるっていうか」

「そーだな、みかんの入ってるクレープなら申し分ない」

「ぷ、そうだね、オレンジ、好きだもんね」

山岡が笑った。

山岡はいつも気を張りつめた表情をしているから、笑顔を見ると少しほっとする。

「……山岡は?」

「え? 私? 私も大好き。駅前のマリオンクレープのバナナチョコ」

「ちょっと2人遅いよっ! 運動部入って鍛えたら!?」

前方から敦子の怒声が聞こえる。

俺と山岡は肩をすくめると、早歩きを始めた。


「私ね、苺アイスジェラードにトッピングでナッツ!あ、でもちょっとまって、チョコチップにしよっかな」

「敦っちゃん、トッピング代なら奢っちゃうよ」

河田と敦子がクレープが並ぶショーケースを見ながらもめている。

山岡はそんな2人を見て笑った。

「兄妹みたい……あ、って言ったら河田君ショックか」

「だろうな」

「じゃあ、私帰るね」

山岡が言って1歩進んだところで止める。

「ちょっと待て」

俺はトッピングに迷う2人を捨て置いて、店員にチョコバナナとオレンジクレープを頼んだ。

軽い手さばきで焼き上がった少し厚めのクレープ生地。

「はい」

上から覗いて、バナナとチョコが見えるクレープを山岡に差し出す。

「え?」

「帰り、電車待ちの間食えよ。糖分補給は大切だぞ」

「あ、えと……」

「あと、お前、俺の電番は知ってるんだよな」

山岡にクレープを無理矢理渡すと、話を変える。

いらないと言われても、俺は2つも食べれない。

< 109 / 377 >

この作品をシェア

pagetop