√セッテン
「……笑ってるよ、大丈夫なんかね、山岡ちゃん」

「無理するタイプだからな」

「敦っちゃんは?」

俺はチラ、と視線だけ河田に投げる。

「お前にしては、めずらしく敦子のネタを最後にもってきたな、どうだったんだ? この前のクレープ屋の後のこと、聞いてなかったよな」

「微笑むなよ、この小悪魔」

その言葉からして、悲惨な目にあったのだろう。

昨日は河田が珍しくだんまりだったから快適で

蔵持七海の情報を1人で調べてしまっていたのだが。

河田はジロ、と俺を睨むようにして視線を投げてきた。

「なんだよ」

「お前さぁ、いつも涼しい顔してるけど、フられて泣いたこととかある?」

「ない」

「ムッカつく」

「そもそも、俺は人と関わるの面倒なタイプだから、そういった現象がまず発生しない」

「あーそういうの、ある意味卓越してて楽かもな」

「俺なんかは、誰かと一緒じゃなきゃ不安でしょーがねってタイプ。期待には応えたいし、応えたんだからそれ相応の報酬は欲しいわけ」

「俺と逆だよな」

「だから利害一致するんだろーな、俺たちは」

何が言いたいんだ。

腹の底を探っているのが分ったらしい。

河田は、ふぅ、と大きくため息をついてうなだれた。

「うがぁー敦っちゃんはダメでした~!」

「敦子はな、手厳しいからな」

「そうじゃない! だからお前が好きなんだよっ! このやろっ俺があんだけアプローチしてんのに、なんで敦っちゃんからお前の相談受けなきゃいけねーんだよっ!」

河田に頭を押さえられ

ガクンガクンと視界が揺れる。

脳細胞がいくつか死んだ気がした。

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