√セッテン
「あ、ちょ、今ふ、っと鼻で笑ってなかった?」

「うん。敦子のお陀仏直行コースだな」

「言っておくけど、地学はちゃんとやってるんだからね。マントル、マグニチュード、震度3!!」

何の暗記だよ、とツッコミを入れると、敦子はすねた。

クラスにカバンを取りに行くと、いつのまにかHRは終わっていて人がまばらだった。

河田はもちろん、山岡の姿もなかった。

飲み終えていたパックのオレンジジュースをゴミバコに投げ入れて教室を出る。

敦子の2Dまで向かうと、うざったい奴と対面した。

「よぉ、黒沢、相変わらず余裕ぶっこいた顔だな」

敦子に表示された死の待ち受けをおもしろおかしく騒ぎ立てたバカ。

2Dの藤田だ。無視をする。

「無視かよー、特進の天才君は人のお話は聞けませんってかー嫌な感じだな」

「潤、おまた……せ」

クラスから飛び出てきた敦子が、廊下に足を踏み入れた途端止った。

藤田と俺がセットでいることに気づいたのだろう。

「……潤、行こうっ」

「飯島ぁ、そういう態度辞めろよ。だから色々噂されるんだぜ? 飯島は俺のこと気つかってるとかさ」

藤田はまだ絡んでくる。

敦子は苦虫でも潰したような顔をして、瞳を細めた。

「自意識過剰だっつの。もーさぁ、藤田の次の恋とか応援するから、私に絡まないでくれる? 潤も迷惑だよ」

「黒沢は特進以外とは聞く口はありません、だってさ。迷惑もクソもないだろ。悪ノリしてちょっかい出しただけで、泣いたりするお前もどうかと思うけど?」

「謝ってきたくせにまだ絡むわけ?」

単純に俺が気にくわないだけだ、と敦子の耳元で言うと、そう? と敦子は納得できない顔をした。

「お前……藤田だっけか」

「そうだよ、ふっざけやがって。忘れやがったのか? 笑いものにしたくせに」

「特進に来たいなら席はいくらでもあるぞ。歓迎するから明日からの試験がんばれよ」

「!」
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