√セッテン
は、と目を開けた。
驚くほどハッキリと目を開けたものだから、目の前にいた敦子が仰け反った。
「びび、びっくりしたぁ……もっとゆっくり目開けてよっ」
「敦……子?」
「そーだよ、もー朝~! 詰め込み完了!三島由紀夫はオッケー!!」
敦子は元気そうだった。
「あ、あいつは?」
「え? なに?あいつって」
「女だよ」
俺は天井を仰ぎ見た。
そこには星の形をした、敦子の部屋の照明がいつも通りにぶら下がっている。
「女……?」
床を見る。
血の滴りもない。
夢?
夢にしては、リアルすぎた。
感覚がはっきり残ってる。
首筋あたりが、寒気で震いあがった。
「女って……誰のことっ!」
「え?お、おい、バカ、お前誤解してるぞ」
「どんな夢見てんのよ! お母さんー! 潤ったらー!」
敦子は俺をからかうようにして部屋を出て階段を降りていく。
ドアが開くと、朝日が差込んできて、空気が清浄になった気がした。
「あら、朝早い……って! 制服のまんまじゃない!敦子っ!」
下で芙美叔母さんの声が聞こえる。
まだ、耳の奥で女の声が耳の中で揺れている。