√セッテン
「ただいま」

玄関を開けると、敦子が勢いよく飛び込んできた。

「久しぶりだぁー、ただいまー」

「ただいま、じゃないだろう、おまえ」

「ただいまだよぉーねぇ、ランランとか元気してる?」

敦子は遠慮する様子もなく廊下を直進していく。

「お邪魔します」

河田と山岡がキョロキョロしながら玄関に入った。

「ランランって、ペット?」

「……魚。熱帯魚」

「へー、今流行ってるよな」

河田が小面倒な靴の紐を解きながら言う。

「山岡、待ってないで踏んづけて奥まで行っていいぞ」

河田が靴を脱ぎ終わるのを待っていたのか、山岡にそう言うと笑った。

「あ、俺マゾだから、踏まれたら喜んじゃうよ」

河田はふざけて言ったが、実際、そうだろうな。

敦子にあれだけ言われていながら、平然としているワケだし、河田にそのケがあるに違いない。

「ねぇねぇ、なんかお魚増えてるよー潤」

奥で敦子がうるさかったので、玄関からダイニングへ移動する。

「魚はいいから、敦子、ビデオ準備して」

ダイニングに入ってきた河田と山岡とすれ違うように、カウンターキッチンに入る。

「何飲む?ウーロン茶とオレンジジュースと紅茶があるけど」

「俺ウーロン。敦っちゃんは?」

「私紅茶ー」

「私、オレンジジュースで」

3人ばらけた。

カップに飲み物を注ぎながら、敦子がビデオの準備をするのを待った。

「始まるよー!」

敦子の声で、ダイニングへ一斉に視線が集まった。
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