√セッテン
「……眠れる森の王子様」
歌い終えた後、吐息を荒くしながら蔵持七海が口を開いた。
「この曲が、新しいアルバムの中で一番好き」
乱れた髪を掻き分けるようにして、一度後ろへ流す。
大きなガラスの瞳がよく見えた。
「好きな人と、ずっと一緒にいられたらって私も思います。春も、夏も、秋も、冬も、ずっと」
季節を挙げるたびに、蔵持七海の指が1本づつあがる。
「でもそんな気持ち、口にはできないから。歌にして伝えます。歌は自由で、……好きです。次は、カウントダウン」
蔵持七海が折った指が1本づつマイクに添えられていく。
そして次の曲のピアノソロが始まった。
「……コピーだけじゃなくて、オリジナルも歌えばいいのに」
敦子は巻き戻しをしているテープを見ながら、ポツリと呟いた。
「この子が、行方不明で、死んじゃってる……かもしれないんだね?」
「そうだね……」
敦子の言葉に山岡が応える。
…………………
俺は
俺は、というと、呆然としていた。
頭が真っ白になっていた。
蔵持七海のライブは2曲で終わった。
眠れる森の王子様、カウントダウン
その2曲だけで照明が落ちた。
ほんの10分もない
その10分で、色々なものでごちゃ混ぜになっていた頭の中を、見事なまでに真っ白にした。
歌い終えた後、吐息を荒くしながら蔵持七海が口を開いた。
「この曲が、新しいアルバムの中で一番好き」
乱れた髪を掻き分けるようにして、一度後ろへ流す。
大きなガラスの瞳がよく見えた。
「好きな人と、ずっと一緒にいられたらって私も思います。春も、夏も、秋も、冬も、ずっと」
季節を挙げるたびに、蔵持七海の指が1本づつあがる。
「でもそんな気持ち、口にはできないから。歌にして伝えます。歌は自由で、……好きです。次は、カウントダウン」
蔵持七海が折った指が1本づつマイクに添えられていく。
そして次の曲のピアノソロが始まった。
「……コピーだけじゃなくて、オリジナルも歌えばいいのに」
敦子は巻き戻しをしているテープを見ながら、ポツリと呟いた。
「この子が、行方不明で、死んじゃってる……かもしれないんだね?」
「そうだね……」
敦子の言葉に山岡が応える。
…………………
俺は
俺は、というと、呆然としていた。
頭が真っ白になっていた。
蔵持七海のライブは2曲で終わった。
眠れる森の王子様、カウントダウン
その2曲だけで照明が落ちた。
ほんの10分もない
その10分で、色々なものでごちゃ混ぜになっていた頭の中を、見事なまでに真っ白にした。